お役立ちコラム

田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「一段の活況が期待されるJリート市場」


2018年11月30日      

 東証REIT(リート)指数が、足下で年初来高値水準まで大きく上昇してきている。11月28日には1821ポイントまで値を上げ、今年2月の年初来安値=1645ポイントに比して11%ほどの値上がりとなった。

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 本欄の5月更新分において、筆者は「東京都心部を中心に不動産市況の良好な状態はしばらく続くものと見て良さそう」などと述べた。その当時、日本経済新聞の紙面上には「2017年度は『負け組』だったREIT相場だが、2018年度に入って楽観論が勢いを増す」といった記述があったことも思い起こされる。そして、実際に2018年度の相場は今のところ全体に極めて好調に推移している。

 ちなみに、東証REIT指数が1800ポイント台を回復したのは2017年3月以来のことである。思えば、同年は4月以降~11月初旬頃まで結構厳しい指数の下落が続いた。おさらいになると思うが、それは2017年3月30日に金融庁が顧客本位の業務運営に関する原則、いわゆるフィデューシャリー・デューティー原則を公表したことに因るところが大きいと見ていいだろう。

その結果として、例の“毎月分配型”を積極的に窓口で勧める金融機関はなくなり、見る見るリート・ファンドから資金が流出したおかげで、Jリートの各銘柄の投資口(市場)価格も大きく値下がりし、当然それが東証REIT指数にも反映されたわけである。

 

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 しかし、本来であれば金融庁がいかなる行政指導を行おうと個々のJリートそのものの価値が急に低下するなどということはあり得ない。むしろ、実際には足下で賃料(家賃)相場が全体にジワジワと上昇しており、それだけJリートの価値も上昇している。

 資金流出で市場価格が見る見る低下する一方、分配金の額は従前と「変わらず」あるいは「やや増加」という結果になっているわけであるから、自ずと分配金利回りは見る見る高くなって行く。よって当然、個々のJリートの投資口価格はいずれ必ず適当なところで下げ止まり、あらためて利回りの魅力に目を向ける投資家によって買い直されて行くのである。もともと、Jリートの市場価格には一定の下方硬直性が認められるのであり、いかにもバリュエーションが低下し過ぎたと考えられる局面で、それは実に魅力的な投資対象となる。

 

 驚いたことに、東京ビジネス5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の10月のオフィス空室率は平均で2.20%という超低レベルにまで低下した(三城商事調べ)。好業績を背景に企業の移転やオフィスの拡張需要が旺盛となっており、同地区の平均空室率は月次データが残る2002年1月以来の最低値を更新している。

 

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 その結果としてオフィス物件の募集賃料も上昇しており、同地区の10月の平均は3.3平方メートル当たり20597円と前月比で0.78%高く、その上昇は58カ月連続になった。もちろん、こうした事実に目を向けない方がどうかしている。実際、海外投資家は今年の年初からJリートへの買い意欲を強めており、1月~10月の買い越し額は累計で2026億円にも上っている。また、以前からJリートの“お得意様”である地方銀行も、あらためて買いの手を出してきている模様である。

 

 結果、東証REIT指数は足下で年初来高値の水準にあるが、それでも平均分配金利回りは4%を超える水住となっており、全体としては割安感がある。実際、なおもNAV倍率が1倍に満たない銘柄も少なからずあり、まだまだ評価不足と言える。より割安な水準に放置されている日本株にも早晩見直し買いが入ってくることと思われ、そうなればJリート市場にも一段の活況が期待されることとなろう。

 

 

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t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

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