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<変化>で読み解く東京の魅力コラム

「「変化」で読み解く東京の魅力(6)」


2018年06月27日      
 前回のコラムでは、「東京に住む外国人」に着目しました。今回のコラムでは、「東京で学ぶ大学生(*留学生を含む)」をとりあげてみます。
さて、東京には大学生が何人いると思いますか?東京の大学に通う学生は、約74万人います。
全国の大学生が約286万人ですので、1/4(25.9%)の大学生が東京で学んでいることになります。
 ちなみに前回のコラムで見た「東京に住む外国人」は、在留外国人の1/5でした。東京で学ぶ大学生は、東京に住む外国人と比較して、より集中が見られるということになります。
 
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さらに、この「東京で学ぶ大学生」の傾向を、東京23区内に限定した推移としてみてみることにしましょう。
東京23区内に通う学部学生の割合は、1900年から2004年にかけて減少傾向が続いてきました。注目すべきは、2005年以降からの急激な増加傾向です。この割合の増加は、23区内の学部学生数の増加に牽引されています。
 
 
学部学生数の推移と割合
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23区内の学部学生の増加をもたらした直接的な要因の1つは、大学キャンパスの都心回帰です。
2004年以降の動向です。
その狙いは、大学の全入時代を迎え熾烈化した入学者獲得競争の打開策として、郊外に構えたキャンパスを都心に移転させ、入学希望者を増加させることにあります。
 また、この23区内の学生数の増加は、複数校合格した大学生の進学先の意思決定とも密接に関係しています。学生と話をして印象的なエピソードがあります。その学生は、「行きたい学部より、都心にあるかどうかを優先して決めた」そうです。また、ほかの学生は、「偏差値の高い郊外の大学より、偏差値が低くなっても都心にキャンパスを構える大学を選んだ」とのことです。
 入学者獲得を狙う大学側の戦略と、都心でのキャンパスライフに憧れる受験生の選択行動によって、大学の都心回帰は今後も続いていきます。

 
0627④
 
東京23区内の大学分布をみると、14の大学を構え13.5万人の学生が通う千代田区を皮切りに、文京区新宿区世田谷区豊島区の順に大学が集中しています。
このキャンパスの都心回帰の動向とあわせて、注目しておきたいのが外国人留学生の増加です。留学生は毎年、増加しています。その数は、239,287人(平成28年5月時点)で、前年と比べて30,908人(14.8%)増加しています。
この増加は、2008年に政府によって発表された「留学生30万人計画」が具体的な数字の変化として現れてきたことによります。グローバルな社会状況に対応していくために掲げられた国家的プロジェクトでもあったのです。
 
 
 留学生数の数値傾向は、留学生30万人に向けた過程にあります。その増加する留学生が、国内のどこで学んでいるかという視点も重要です。ちなみに、2018年現在は、全国で24万人いる留学生の55.6%、約半数が関東で学んでいます。さらに、顕著なことに関東で学ぶ留学生の約7割が東京で学んでいます。その数は、留学生全体の39%、約4割に及びます。
キャンパスの都心回帰と留学生の都心集中は、「東京の一極集中」を後ろ支えしています。
 
 
 留学生の居住形態もみておきます。24万人にいる留学生の75.4%の18万人学生が民間宿舎か、アパート等に居住しています。割合から推察するに、東京でアパート等に居住する留学生は、約12.6万人います。
 
 
ここでもっとも留学生の受け入れ数が多い早稲田大学の学生の居住形態をあわせて確認します。

留学生受け入れ数の多い大学
 
 それでは、留学生数の受け入れが一番、早稲田大学を事例に大学生と留学生の居住携帯を比較してみます。親と同居し、実家から通学する早稲田大学の学生は、67.1%です。一人暮らしをする学生は、24.9%です。6?7割の学生が実家から通い、3割弱の学生が一人暮らしをするというのが、都内の私立大学に通う大学生の居住形態の近年の傾向です。
 それに対して、早稲田大学に通う留学生の56.3%が、借家に住んでいます。当然のことながら、留学生は実家から通うことは物理的に不可能であるので、大学施設に入居することは叶わなければ、一人暮らしをするようになります。(近年は、ルームシェアをする留学生も増えていますが、その多くは民間賃貸物件での居住となります。)
 
早稲田大学学生の居住形態比較(学生と留学生)
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http://www.waseda.jp/student/research/2014/chosa2014_9s10s.pdf
 
今回、「東京で学ぶ大学生」に焦点をあててみえてくるのは
大学間競争の熾烈化した入学者数獲得戦略としてのキャンパスの都心回帰と、
グローバル化対応に向けた国家プロジェクトとしての留学生の増加と東京一極集中、のどちらもが東京で学ぶ大学生を毎年供給し続ける安定したエンジンとなっている
ということです。
感覚的にはわかっていることを、このように数字の「変化」に現れる客観的な動態として確認していくことは大切な作業です。人口の集合的な移動は、市場原理で淘汰されないための生き残り戦略や、よりマクロなスケールでの国家プロジェクトとしての起死回生策の「成果」としてわれわれの前に立ちあらわれるのです。

国家プロジェクトとしての増加する留学生を、受け入れていくキャパシティを持っている大学が都心に集中しているという現状から鑑みるに、「東京で学ぶ大学生」の量的な増加と質的なダイバーシティは今後も当分の間、続いていくことになります。
それが「地方」の犠牲によって成り立つのではなく、「地方」と「東京」とのアクティブな共存によって再生産されることを望みたいものです。

今回見た居住形態も、単に個々の経済的理由による合理的選択というだけではなく、市場原理や国家戦略にドライブされるマクロな社会トレンドとの折り合いの中で生み出される生活の構造なのです。

 

過去の≪田中 研之輔の「「変化」で読み解く東京の魅力コラム≫はコチラ

田中 研之輔(たなか けんのすけ

1976年生まれ。法政大学教授 博士(社会学)。一橋大学大学院修了。日本学術振興会特別研究員(DC/PD:一橋大学 SPD:東京大学)。メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員を歴任。
<変化>に着目した「空間-行動」分析を得意として、<東京>の魅力分析を続けている。著作には、『都市のリアル』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』『先生は教えてくれない大学のトリセツ』『覚醒せよ、わが身体』他。セミナーや講演会数も多数。個人でも投資を行い、企業顧問もつとめる。株式会社ゲイト社外顧問。

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