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「田嶋智太郎氏のコラムを更新しました。」


2018年11月01日    コラム  

 

田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「株価急落のメカニズムを探り年末高への期待につげる」


2018年11月01日      
 
 
 

去る10月2日、日経平均株価は2万4448円という“27年ぶりの高値”まで上値を伸ばす場面がありながら、以降は大幅な下げに転じて月末までに最大で3500円近くもの値下がりを演じた。そもそも、10月の大幅な株価下落は何が原因であったのか。

 

もちろん、それが米国発であることは誰もが認めるところであり、その余波は世界の株式市場からおよそ770兆円もの時価総額を奪い去ったとされる。市場では、米国が仕掛けた中国に対する貿易戦争の悪影響が懸念された結果であると講釈されることも多いが、果たしてそうか。確かに、その悪影響とやらを市場が過度に悲観視していることは確かである。おそらく、世界の株価は「今想定できる限り最悪の事態まですべて織り込みに行った」と言えるのではないだろうか。

 

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 少し前、市場には「米中間選挙が終わりさえすれば、米中間の関係も徐々に改善されて行く」と見る向きが多かった。しかし、10月に入って「そうした見方は甘い」と考えられはじめ、世界全体の景気後退局面入り、いわゆる「終わりの始まり」が危惧されて、市場のムードは一気に悪化。そうなれば、もはや「下げ相場に買い材料なし」である。

 

 過日、米金融情報サービス大手ブルームバーグが“関係者”の話として「11月の20カ国・地域(G20)首脳会談の際の米中首脳会談が不調なら、12月はじめにも中国からの輸入品リストすべてに新たな関税を課す計画がある」と伝えた。これ受けて、その日の米国株は大幅に値を下げることとなったが、ここで冷静に考えたいことは幾つもある。果たして、ブルームバーグの言う“関係者”とは何者なのか。その話に、一体どの程度の信ぴょう性があるというのか。そもそも、米中首脳会談が不調に終わるかどうかということなど、報道された段階では誰にもわかるはずがない。その実、トランプ米大統領は後に米FOXテレビとのインタビューに応じ、対中貿易に関して「素晴らしい取引を見込む」などと述べているのである。

 

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 振り返ると、10月の記録的な株価下落は多分に機械的、物理的なメカニズムのなかで演じられることになったことが思い起こされる。大きかったのは10月10日、11日の2日間でNYダウ平均が合計で1300ドル超も下落したこと。そして、その最初のきっかけになったのは、9日のアジア時間中(つまり、米市場にとっては時間外)に米10年債利回りが3.25%台へと急上昇したことであると思われる。

 

アジア時間中に米国債の売りがまとまって出たということなのであるから、その背後にはどうしたって中国の影がチラつく。外貨準備の一部として保有していた米国債を中国政府が売却し、代わりに人民元を買うことでその価値が一段と損なわれないように対応したということなのであろう。要は、止むにやまれず中国が米国債を売った結果、そうでなくとも「米失業率=3.7%まで低下」という材料によって強含みとなっていた米債利回りの上昇に一時的にも一層の弾みがついたということなのである。

 

 たまたま複数の要素が重なって一時的に米債利回りが急上昇したことを受けて、翌10日には世界の有力ファンドが米大手IT銘柄などに少々まとまった利益確定売りを出した。その結果、NYダウ平均が極度に大きく下げたことでVIX(恐怖)指数が急上昇。そのことを受けて、他のファンドが競って手持ちの株を次々に利益確定するといった“負の連鎖”が生じたのである。つまり、10月の下げは実に機械的なものであった。

 

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 機械的に下げたのであれば、ことはそれほど深刻でもない。11月30日から開始されるG20首脳会議の場で執り行われる見込みの「米中首脳会談」については、何らかの関係改善の兆しが見て取れるようになる可能性も否定はできないと思われる。そうなれば市場のムードは大きくリスクオンへと傾く可能性が高く、日本株についてもあらためて年末高の期待が盛り上げってきておかしくないと個人的には考える。まだまだ「終わりは始まらない」。

 

 

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t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

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