お役立ちコラム

田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「「投資」を取り巻く様々な状況変化に要注目!!」


2018年07月10日      

 ようやく日本でも「貯蓄から投資へ」の動きが拡がり始める可能性が高まってきた。

その背景として、一つに「個人の運用次第で将来の給付額が変わる『確定拠出年金』」の制度を導入する企業が、ここにきて急増していることが挙げられる。

0710①

増加の理由の一つは「運用のリスクを企業側が負わないため」であるが、むしろ最近は「同制度を導入することで福利厚生を充実させ、深刻な人手不足を解消したいと考える企業が増えている」ということもある。
もちろん、同制度を導入する企業と加入者の数が増えたからといって、それだけでそう易々と『貯蓄から投資へ』の動きが拡がるというわけではない。実際、2017年3月末時点における確定拠出年金の運用資産の半分以上は「元本確保型」の商品に振り向けられているというのが実情であった。

しかし、2018年5月に施行された改正確定拠出年金法が今後の流れを一気に変える可能性は十分にあると言える。
同法は、金融機関が用意する運用商品について以前は「3本以上で、うち1本は元本確保型」としていたものを、このたび「リスク・リターンの異なる3本以上35本以下」に改正した。

結果、制度加入後に運用商品を具体的に自ら決めない加入者の資金を自動的に振り向ける「初期設定商品(基本商品)」について、すでに一部の金融機関では定期預金のような貯蓄商品から投資信託に変更する動きが見られ始めた。つまり、そうした金融機関を通じて確定拠出年金を利用する加入者は、当初から漏れなく「投資」に資金を振り向けることとなる。
また、目下は厚生労働省が個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を銀行などの窓口で手軽に加入できるように見直すことにも取り組んでおり、まずは確定拠出年金を通じて「投資」への流れが拡がることが大いに期待される。

0720②

 一方、その「投資」の世界で今「ESG投資」の手法が大注目を浴びているという事実も見逃せない。これは、環境保護や社会貢献、企業統治などに対する企業の取り組み姿勢を投資判断の際の重要な材料とする手法で、環境(Environment)社会(Social)企業統治(Governance)の頭文字をとってEGS投資と称する。
財務以外の情報によって企業の発展性や持続可能性を見極めることを目的としており、基本的には長期投資に効果があるとされる。
近年、日本でも機関投資家がESG投資への注目度合い、取り組み度合いを高めており、その手法は個人投資家にとっても大いに参考になる。
すでにESG投資の考え方に重きを置いた投信なども登場しており、まずはそういった商品の研究から始めてみるのも一手と言えよう。

 なお、近頃は上場不動産投資信託=J-REITへの投資についてもESG投資の視座が持ち込まれるケースが増えてきていて実に興味深い。要は其々のJ-REITが投資対象とする不動産物件について環境性能の向上や省エネ化などの工夫・努力がきちんとなされているか否かが問われるというわけなのだ。

0710③

面白いことに、すでに市場ではESG投資の観点から魅力の劣るJ-REITには買いの手が入りにくくなっているし、結果的に市場価格も低迷しやすくなっている。ここでもうおわかりと思うが、環境性能の向上や省エネ化などの工夫・努力がきちんとなされている不動産物件はテナントの満足度が向上するし、それだけ人気も高まるため賃料の引き上げも比較的容易になる。
結果的に賃料収入増
加すれば、当然、J-REITとしての価値も上がり、市場価格も強含みで推移するということになるわけである。
これからは、個々の不動産物件に目を向ける際にも、一つにESG投資の観点から“優良”であるかどうかが問われる時代となって行きそうである。

 

過去の≪田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング≫はコチラ
   
 
t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

一覧に戻る