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田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「期待通りとなった!?年度替わり後の金融相場」


2018年05月01日      

 前回更新分の本欄で、筆者は「この4月以降、対円でドルが反転しさえすれば、日本株の上値のつかえも一気に外れ、(株価が)過度に割安な状態は解消される方向へと着実に向かうこととなるだろう」と想定した。

 実際、4月初旬あたりからドルと日本株は徐々にリバウンド相場の様相を呈し始め、3月23日に一時104.64円まで下押したドル/円は4月下旬に一時109円台半ばまで上昇することとなった。また、一方の日本株については3月26日に一時2万0300円台まで下押した日経平均株価が4月下旬までに2万2000円台半ばで出直る動きを見せている。

 その背景には、一つに本邦機関投資家を中心とする国内投資家による外債売りが3月末までに一巡し、新年度入り後から徐々に新たな資金が外債に向かい始めているという見逃せない事実がある。

0501① 
財務省が週次ベースで公表している『対外及び対内証券売買契約等の状況』によれば、国内投資家による外債(対外証券中の中長期債)への投資状況は3月の最終週と4月の第1週こそ売り越しであったものの、4月の第2週、第3週については其々7997億円、9503億円の買い越しとなった。
つまりは、年初あたりから3月末まで続いていた本邦機関投資家による米国債の損切りに伴うドル売りが一巡し、年度替わりに伴うニューキャッシュでの外債買いとドル買いの動きが出てきたということになろう。

もちろん、外国為替市場で純粋にドルを買い直そうとする動きが足下で急になってきていることも事実。それは4月に入って複数の世界的政治リスクや地政学的リスクへの懸念が後退したことで、少なくともリスク回避の円買いニーズが低下したこととも関わる。

少し振り返ると、4月10日に開幕したアジアフォーラムにおいて中国の習近平国家主席が市場開放の方針を打ち出したことで、それまで市場に漂っていた米中貿易戦争勃発の可能性に対する警戒は一気に吹き飛ぶこととなった
また、4月13日に実施された米軍によるシリア攻撃にしても、土・日(14日・15日)を挟んだことで週明け16日には市場ですっかり消化済みとなった。
さらに、4月20日には北朝鮮の金正恩委員長が朝鮮労働党中央委員会総会において、翌21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止する方針であるとの驚愕のニュースが伝わり、これまでドル/円やクロス円全般の上値を押さえていた政治的・地政学的なリスクは大いに後退することとなったわけである。

0501③

 また、4月の第3週を通過した時点で海外投資家が4週連続して日本株を買い越したという点にも大いに注目しておきたい。
もともと、4月は「海外投資家が2017年まで17年連続で日本株を買い越してきた」という過去のデータから、日本株の出直りに対する市場の期待には以前から強いものがあった。

もちろん、一方でドル/円が109円台半ばあたりまで上値を伸ばす展開となってきたことで、3月末まで市場で強まっていた国内上場企業の今期利益の成長鈍化懸念も足下でだいぶ後退している。総じて、この4月は以前から期待されていた様々な事柄が実際に現実のものとなったことで、市場全体のムードは一気に改善したと言っていいだろう。

0501②

 なお、年度替わり後のドル/円や日本株が大きく出直りの動きを見せるなか、国内の不動産投資信託(REIT)市場にも強気の見方が広がり始めていることは特筆しておくべきであろう。
4月21日付の日本経済新聞には『REIT膨らむ楽観論』との見出しで「2017年度は『負け組』だったREIT相場だが、18年度に入って楽観論が勢いを増す」との記事が躍った。
オフィス賃料の上昇がその背景とのことで、東京都心部を中心に不動産市況の良好な状態はしばらく続くものと見て良さそうである。

 

 

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t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

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