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田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「景気が本格的に拡大し始めるときに付き物の一時調整はチャンス!」


2018年03月02日      

この2月の国際金融相場は、とにかく荒れに荒れた。

周知のとおり、米株式市場では代表的な株価指標であるNYダウ平均が
2月2日の寄り付き段階で位置していた26000ドル台から一旦大きく値を下げ、その1週間後には一時23360ドルまで急落した。

連れて、日経平均株価は2月1日に2万3492円の高値をつけていたところから、2月14日には一時2万0950円まで大きく下押す場面を垣間見ることとなった。

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米・日株価が一旦急落する大きなきっかけとなったのは、2月2日に発表された1月分の米雇用統計の内容。

幾つかある項目のうち、最も市場が注目したのは同月の「平均時給」が前年同月比+2.9%もの高い伸びを示した点であった。
前月分の速報値が+2.5%(後に+2.7%に上方修正)であっただけに、かなり大きな賃上げになったという印象を市場に与えたことは確かだ。

とはいえ、あくまで単月の指標結果であることに加え、1月は米国の東部から中西部、南部にかけての広い地域で記録的な寒波が続いたことにより、その影響が各方面に及んだ可能性もある。
ちなみに、市場の一部では「寒波の影響で平均労働時間が短縮したため、固定給を受け取る従業員の“時給”が計算上(数字の上で)増えた」との声も聞かれる。

いずれにしても、2月の市場では「米賃上げの兆し」→「インフレ率上昇の可能性」→「米国債の価格下落」→「米国債の利回り上昇」→「米株価の下落懸念」という連想が働くこととなり、実際に株価が一時的にも急落する場面があった。
あくまで一時的な過剰反応に過ぎないと思われるのだが、嘆かわしいのは「ひとたび株価の調整が大掛かりに起きると、しばらくは関連の影響が悪循環し続ける」ということである。

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米株価の下落に連れて日本株が下がると、互いに影響し合いやすいドル/円にも下押し圧力がかかる。
このドル安・円高の原因は、もともと「米賃上げの兆し」に対する市場の過剰反応なのであるが、ひとたびドル/円が下げ始めると市場の一部では「米国の財政悪化懸念がドル安の主因」などと叫ばれはじめ、それがいずれ独り歩きし始めるからタチが悪い。

本来、米国で賃上げの傾向が強まることは、誰もが長らく待ち望んでいたグッドニュースに他ならない。それにも拘らず、景気が本格的に拡大し始める当初の時期というのは、往々にして株価が一旦調整したり該当する国や地域の通貨が売り圧力に晒されたりすることが少なくない。もちろん、あくまで一時的なものであるケースが大半だ。

目下は米国を中心とした世界経済全体に大きなパラダイムシフトが生じている時間帯と言える。
米国経済について言えば「低インフレ期からインフレ上昇期へのシフト」、米株式相場について言えば「金融相場から業績相場への移行」、米金融政策について言えば「正常化から引き締めへの転換前」ということになろうか。

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そして、このように大きなパラダイムシフトが生じている時間帯というのは「一体旦どのようなセオリー、シナリオに基づいて投資判断をすればよいか」があやふやになる時間帯というのがどうしてもある。
市場が何をもって売買の判断を行えばよいのか一時的にも分らなくなる。
しかし、多くの場合において数カ月うちには調整が一巡し、一旦下落した株価や通貨の価値は再び大きく見直されるものである。

前回の米金利上昇(米利上げ)局面というのは2004年6月から2006年6月にかけてFRBが計17回の利上げを実施した時間帯のことである。その際、当初こそ米株価やドルが調整を交える場面もあったものの、数カ月後には底入れから反発に転じて最終的に米株高&ドル高となった。

つまり、当初数カ月の調整は絶好のチャンスということになろう。

 

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t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

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