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田嶋智太郎の経済トレンド・ウォッチング

「米株価は先行きを楽観!?」


2017年06月01日      

 

 5月を振り返り、市場関係者の印象に特に残った出来事、市場に大きく影響を及ぼした材料を幾つか挙げよと言われれば、それは一つに仏大統領選ということになるでしょう。

 

 

フランス国旗

 

 

 

周知のとおり、5月7日に行われた決選投票では下馬評通りに中道派のマクロン氏が勝利を収めることとなり、その事実が伝わるや全体のムードは一気にリスクオンへと傾くことになりました。この仏大統領選の結果により、それまで懸念されていた欧州での極端なポピュリズムの台頭という不安材料が払しょくされ、同時に欧州政治の混乱が世界経済全体の成長鈍化につながるとの懸念も一気に後退することとなりました。

 

結果、5月8日の日経平均株価も大きく「窓」を空ける形で上昇し、5月16日には一時1万9998円と2万円の大台まで「あと2円」という水準まで上値を伸ばす場面もありました。その背景で、仏大統領選の結果を受けてドル/円が一時1114円台前半の水準まで円安方向に振れる場面があったということも見逃せません。

 

 一方、5月12日に発表のピークとなった上場企業の2017年3月期決算は前期比で20%を超える増益となり、続く2018年3月期(今期・会社予想)も2期連続で過去最高益を更新する見通しとなりました。今期の純利益は前期比+4%増程度の見通しとされているようですが、この時期に打ち出される国内上場企業の「会社予想」は過度に控えめであることが多く、最終的には大きく上方修正される可能性が十分にあると見られます。

 ともあれ、現時点での会社予想を元にしても日経平均株価を構成する225社の平均1株当たり純利益(予想)は1400円を超えてきています。リーマン・ショック以降の日経平均株価の株価収益率(PER)の平均は15倍程度で、これを元に日経平均株価のフェアバリュー(妥当水準)を弾き出せば2万1000円、仮にPER=16倍まで買われるとすれば2万2000円を超えてきてもおかしくはないというのが足下の実力です。

 

 

グラフ

 

 

 とはいえ、現実問題として執筆時点では日経平均株価がいまだ2万円の大台を回復していないことも事実であり、また足下のドル/円が111円割れの水準まで値を切り下げてきていることも事実です。それは、言うまでもなく米大統領の「ロシアゲート疑惑(露疑惑)が俄かに取り沙汰されることとなった点が大きいと言えます。一部では米大統領の「弾劾」や「辞任」の可能性まで囁かれる始末で、今後も長らく米政局の混乱が続けば、これまで順調な歩みを進めてきた米景気拡大の先行きに暗雲が漂うのではと不安視する向きもないではありません。

 

 ただ、この露疑惑が大きくクローズアップされるようになって以降も、米国の主要な株価指標が極めて強気の展開を続けていることも見逃すことはできません。米国のS&P500種株価指数やナスダック総合指数は連日のごとく史上最高値を更新しており、最も代表的なNYダウ工業株30種平均も史上最高値まであと一歩という水準にあります。

 このことに関して、5月23日付の日本経済新聞夕刊「ウォール街ラウンドアップ」のコーナーには『トランプ氏退任を語る楽観』というタイトルで非常に興味深い話題が取り上げられていました。NY総局の山下晃氏によれば、最近の市場では「もしもトランプ大統領が辞めたら」という話題が目立つようになってきているとのこと。

 

アメリカ国会議事堂

 

 

なかには「(そうなれば)米国株は3~5%は上昇するだろう」との声もあり、また副大統領のペンス氏が大統領になり代われば「よりうまく経済刺激策を実行できるかもしれない」との見方も根強いなどと綴られています。「いかにも米国流の楽観主義」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、実際に米株高が続き、6月には米利上げが実施されることもほぼ確実視されている(執筆時)状況にあって、今後の日本経済や日本株などの行方をいたずらに悲観視することも差し控えたいところです。

 

 

 

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t_tashima  田嶋 智太郎(たじま ともたろう)

1964年東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」、「生活情報論」の講座を受け持つ。過去20年余、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ100回前後、これまでの累計講演回数は3000回近くに上る。

 

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